映画『ロードオブザリング』シリーズや『ホビット』で知られるピータージャクソンが手がけた作品『モータルエンジン』。
フィリップリーブが描いた全4編からなる原作小説『移動都市』を題材にしたスチームパンクな世界観が話題を呼び、全世界で大ヒットを記録しています。
とはいえ、映画の宣伝不足やキャストが有名ではないという事実のせいか日本ではあまり知名度が上がらず、公開日まで延期されてしまいました。
今回はそんな映画『モータルエンジン』について、ネタバレあらすじをラスト結末までご紹介。加えて原作小説を読んだ私が軽い疑問点の解説などもしていきます。
この記事には『モータルエンジン』のネタバレが含まれます。視聴後に閲覧するか、ネタバレを気にしないという方は先に進んでください。
目次
映画『モータルエンジン』概要
- 監督:クリスチャン・リヴァース
- 脚本:ピーター・ジャクソン
- 上映時間:128分
- 原作:移動都市
あらすじ
古代文明が起こした大国間の戦争によって崩壊した人類は、数千年の時を経て新しい生き方を確立していた。都市は戦車のようにキャタピラを付けることで常に動き続け、大きい都市は小さな都市を食べる食物連鎖が起きていたのだ。
そんな中、アサシンのヘスター・ショウはロンドンに潜入してトム・ナッツワーシーと呼ばれる若者と出会う。2人は移動都市ロンドンから離れ、世界を旅する事になる。しかし、裏では移動都市と反移動都市との対立が続き、遂には古代文明を滅ぼす原因にもなった技術が蘇り始めた。
果たして世に平和がもたされることはあるのだろうか。
映画『モータルエンジン』主要キャラクター&キャスト
- ヘスター・ショウ/ヘラ・ヒルマー
- トム・ナッツワーシー/ロバート・シーハン
- サディアス・ヴァレンタイン/ヒューゴ・ウィービング
- キャサリン・ヴァレンタイン/レイア・ジョージ
- アナ・ファン/ジハエ
- ベヴィス・ポット/ローナン・ラフテリー
- マグナス・クローム/パトリック・マラハイド
- シュライク(ストーカー)/スティーヴン・ラング
映画『モータルエンジン』ネタバレあらすじをラスト結末まで
映画『モータルエンジン』のストーリーを結末まで紹介します。
ネタバレ「移動都市と反移動都市同盟」
数千年も前のはるか昔、中国とアメリカの二大国家は原子の力を用いた戦争を繰り広げ、人類は多くの犠牲者を犠牲者を出した。
この戦争で要した時間は、開始から終了までたったの60分だったため、史実には60分戦争という名前が記されていた。
それから長い年月がたった現在、生き残った人類の多くは独自の移動型都市を形成し、地球上を止まることなく動き続けている。
この世界は弱肉強食主義だ。というのも、移動都市には大きさが大小さまざまあり、ウェディングケーキを彷彿とさせるような複数の階層からなる都市や、人が数人住める程度の小さい場所まであるため。
移動都市の多くはイギリスを含むヨーロッパからアジアに存在し、狩り場で食っては食われという食物連鎖が起きている。
ただし、全ての都市が移動しているわけではなかった。移動都市とは反対に静止都市というものもあり、それらは反移動都市同盟を組むことで反発していた。
とりわけ大きな反移動都市同盟として挙げられるのは、中国の山岳地帯付近に形成されているシャングオという場所。シャングオには滅びた都市などから集めた部品で形成された超巨大な防護壁があり、移動都市の侵入を許さなかった。
防護壁に近づく移動都市は、強力な銃や飛行船からの猛烈な攻撃を受けるため、近づくことすらできないのだ。
もちろん防護壁を破壊して新たな狩り場を見つけようとする都市も存在する。その1つがロンドンだった。
この世界では、アイフォンやシーディー、パソコンといった古代の遺物はオールドテクと呼ばれ、利用したり骨董品として扱われている。
ネタバレ「暗殺者へスター・ショウのロンドン侵入」
ある時ロンドンは、小さな岩塩採掘都市ソルツヘイクンを見つけて追いかけ、最終的にその大顎を使って捕まえることに成功する。
採掘都市ソルツヘイクンはロンドン市長兼工学ギルド長を務めるマグナス・クロームの命令により人口とパーツが吸収された。
ただ、ソルツヘイクンには赤い布を顔に巻き付けた暗殺者の女性ヘスター・ショウが隠れるように乗り込んでいて、ロンドンの有名人である史学ギルド長サディアス・ヴァレンタインの命を狙っている。
史学ギルドの3級見習いだったトム・ナッツワーシーは、ロンドン博物館に展示するためのオールドテクがソルツヘイクンに残っていないかを探すため、サディアスの娘キャサリン・ヴァレンタインに付いてロンドン最下層ガットに行くことになった。
憧れのサディアスに会えた喜びやその娘キャサリンの可愛さに見とれるトムだったが、ちょうどその時ヘスター・ショウが目に入る。するとヘスターはいきなりサディアスに襲い掛かったため、トムは間一髪のところでそれを阻止した。
驚いた表情を見せたヘスターは暗殺に失敗してすぐロンドンの最下層を逃げ始めたため、トムもそれを追いかけてダストシュートまで追い詰める。後がなくなったヘスターは、ダストシュートから飛び降りて脱出していた。
しかし、その前にヘスターはあるセリフをトムに言い残した。「私の母親はヴァレンタインに亡き者にされ、自分の顔も傷つけられた」のだとか。
トムはサディアス・ヴァレンタインにそのことを報告すると、ダストシュートに押されて落とされてしまった。
ロンドンは最下層でも高く、ダストシュートから落とされれば無事では済まない。恐らくヘスターもトムも亡くなっただろう、と思われていた。
ネタバレ「へスター&トムは奴隷になる?」
ロンドンの巨大なキャタピラが通過した地面は泥で柔らかくなっているせいか、トムとヘスターは奇跡的に生きていたようだ。2人はキャタピラの跡などを頼りに狩り場を歩き続けていた。
その結果、通りかかった移動都市スカトルバッグに拾われて安らぎを得る、かに見えたが、2人はそのまま小さな監房に放り込まれて鍵をかけられてしまった。
どうやらスカトルバッグの市長は2人を奴隷市場で売りさばくつもりらしい。
監房にいる間、ヘスターはトムに自分の事を話した。サディアス・ヴァレンタインはヘスターの母親であり考古学者でもあったパンドラ・ショウを亡き者にし、彼女がアメリカの死の大陸で見つけたオールドテクを盗んだというのだ。また、ヘスターについた顔の大きな傷もサディアスに付けられたもので、母親が死ぬ前にネックレスを受け取ったことも。
一方サディアス・ヴァレンタインはヘスターが亡くなっていないと予測し、全身サイボーグで緑の目をしたストーカー(名前はシュライク)を開放、ヘスターを追い詰めて亡き者にするよう命じていた。
ネタバレ「ラストウォーター奴隷市場」
ラストウォーター奴隷市場に到着したスカトルバッグ。その時トムとヘスターはなんとか逃げ出し、反移動都市同盟のメンバーだったアナ・ファングに助け出されて何を逃れた。しかしサディアスが解放したシュライクが追いかけてきていたためまだ逃げる必要があった。
その後、アナ・ファングの持つ飛行船ジェニー・ハニヴァー号に乗り込んだトムとヘスターはなんとかシュライクから逃げることができた。
ヘスターはシュライクを知っているようだ。なんでも小さい頃にシュライクに見つけられ、育てられたとのこと。ヘスターにとってシュライクは親密な”壊れた何か”だった。
一方シュライクは、ヘスターを自分のようなストーカーにすることを願っていて、ヘスター自身もそれを約束した過去がある。ただ、移動都市ロンドンが狩り場に来ている事を知ったヘスターは、シュライクから離れてサディアスへの復讐心に燃えていたのだ。
ロンドンでは、サディアスの娘、キャサリンが父親が何かを隠していると考えてこそこそと真実を追い求めていた。その過程で技術者見習いのベヴィス・ポットと知り合い、父親がトムをダストシュートから落としたという事実にたどり着いた。
また、サディアスは何かエネルギーを使う計画を企て、セントポール大聖堂を改造しているということまでキャサリンは知ることになる。小さい頃から父親を慕っていたキャサリンは、真実を知ったことで心が揺らいでいた。トムの事を気に入っていただけに傷は大きかった。
ネタバレ「空中都市エアヘイブンとメデューサ」
ヘスターとショウは、アナ・ファンの飛行船に乗せられ空中都市エアヘイブンに到着した。そこには反移動都市同盟の他のメンバーがたくさんおり、サディアス・ヴァレンタインが企てている計画について話合いがされていた。
話の過程でトムは、ヘスターの母親が見つけたオールドテクはメドゥーサと呼ばれる物で、都市を瞬時に破壊するほどの威力を持つ超兵器という事を理解した。
それからエアヘイブンは、ヘスターを追いかけてきたシュライクによって破壊され、火が付くなど散々な状態となる。シュライクや反移動都市同盟のメンバー達は激しい小競り合いを続けていた。
最終的にシュライクは、ヘスターがトムと恋に落ちていることを知って戦意を喪失する。シュライクはヘスターと”ストーカー”として一緒にいたいと思っていたにも関わらず、もはや叶う状態ではなかった。
シュライクは最後に、ヘスターと和解し、依然した約束も破棄することにした。
それからヘスターとトム、アナ・ファンや生き残った反移動都市同盟のメンバーは、巨大な防護壁のある場所に向かうことにした。
一方サディアスは、ロンドン市長のマグナス・クロームをクーデターで亡き者にしていた。超兵器メドゥーサによって反移動都市同盟の巨大な防護壁を破壊し、未開拓の新たなアジアの狩り場を手に入れることをロンドン市民に確約したのだ。
ネタバレ「ロンドン侵攻と反移動都市同盟の抵抗」
巨大な防護壁ではアナがクワンに対してロンドンへの反移動都市同盟の艦隊派遣を要請していた。しかし、ロンドンは超兵器メドゥーサを使った攻撃を行い、反移動都市同盟の戦力を根こそぎ奪うとともに壁に大きな穴を空ける。
その間、ヘスターは母親から貰ったネックレスの中にクラッシュドライブが入っているのを見つけた。どうやらクラッシュドライブを使えばメドゥーサを無効化できるらしい。
ヘスター達は移動都市ロンドンの脅威に対抗するため、残った戦力で直接対決しに行くことを決意した。
ネタバレ「ロンドンの好きにはさせない」
ヘスターとアナ・ファンはトムが操縦する飛行船ジェニー・ハニヴァー号からセントポール大聖堂に降り立つ。アナはサディアスと決闘していたが、致命的なダメージを負ってしまった。
その間、ヘスターはクラッシュドライブを使ってメドゥーサを無効化する。
後がなくなったサディアスは部下に命令し、ロンドンをそのまま防護壁に向かわせようとした。しかし、トムがキャサリンの助けによってロンドンのエンジンを破壊したことで徐々に減速していた。
ヴァレンタインは自身の持つ飛行船13階行のエレベーター号で脱出を試みていたものの、ヘスターが追いかけて決闘し始める。
それからトムはヘスターを救い出し、サディアスの船を撃ち落とした。サディアスは生きていたが、運悪くロンドンの走行する場所に落ちて巻き込まれて亡くなったようだ。
キャサリン率いる生き残ったロンドン市民たちは、反移動都市同盟と平和を作る事を約束した。
それからトムとヘスターは、アナ・ファンが残したジェニー・ハニヴァー号を使って世界を見て回る旅に出ることにした。
映画『モータルエンジン』○個の疑問点を解説
『モータルエンジン』を見て疑問に思った点や、わかりにくかった点などをまとめて解説しています。
原作小説を読んでいないとわからないことまで!
メドゥーサとは?
『モータルエンジン』のストーリーで鍵となるものと言えばメドゥーサ。ギリシャ神話に登場する、髪が蛇で見たものを石に変えてしまう怪物と同じで、綴りはMEDUSAです。メドゥーサはオールドテクの中でも強大な力を持つ兵器であり、数千年前のアメリカが60分戦争の際に使いました。
そのためメドゥーサの人工知能コンピューターを発見するのもアメリカの死の大地です。メドゥーサは200km近い射程距離を持つレーザー型の兵器で、移動都市ロンドンのセントポール大聖堂に備え付けられています。紫色のまがまがしいレーザーの威力はすさまじく、巨大な防護壁も簡単に穴が空くほか、人間に当たれば瞬時に炭素レベルにしてしまいます。
オールドテクとは?
オールドテクは、移動都市が蔓延る数千年前のずっと昔に使われていたアイテムの事です。今でいう骨董品がオールドテクに当たり、パソコンやキーボード、スマホなんかも映画の世界で見つかればオールドテクとなります。
オールドテクには様々なものがあり、中には高い値段が付けられるものから、メドゥーサのような兵器としての能力を持つものまで存在。
ヘスターがサディアスの命を狙う理由
ロンドンに降り立ったヘスター・ショウが真っ先に命を狙ったのは史学ギルド長を務めるサディアスでした。これにはヘスターの過去が理由としてあります。ヘスターが小さい頃、サディアスとパンドラ・ショウは考古学者の仲間同士でした。
そしてある時、パンドラ・ショウはメドゥーサの人工知能コンピューターをサディアスがいないときに見つけます。パンドラ・ショウはそれを売りさばいて仲間だったサディアスと分け前を決めようとしたものの、サディアスはロンドンで使いたかったのです。
パンドラ・ショウは反移動都市の考えだったため、それは嫌でした。そして拒否されたサディアスはパンドラ・ショウを亡き者にし、近くにいたヘスター・ショウも襲ったのです。
致命傷を逃れたもののヘスター・ショウの顔には大きな傷が残り、生き延びてサディアスに復讐を誓っていたのが背景です。それをトムに邪魔されたため最初はヘスターも怒り気味ですが。
サディアスが巨大な防護壁を壊したい理由
サディアスはメドゥーサを使って巨大な防護壁を破壊し、反移動都市同盟の場所に侵入しようとしていました。これには大きな理由として、獲物不足が関係します。移動都市が生まれてからしばらくは食物連鎖もさかんに行われていて、小さな都市は大きな都市に食われていました。
ただ、本作の時系列の世界では移動都市自体も少なくなってきていて、資源が枯渇していたのです。当然資源が足りない世界では大きな都市だったロンドンも生活が苦しいという状況なので、小さな都市でも食べないと生きていけません。
そんな中サディアスが目をつけたのが反移動都市同盟。巨大な防護壁がある反移動都市同盟は、ロンドンのいる右側、ちょうど中国の山岳地帯あたりにある設定です。
そこよりも左側は借りつくされているため移動都市もあまりないのですが、反移動都市同盟のある右側は移動都市が行ったことのない未踏の世界であり、資源が潤沢にあると踏んでいたのです。そこでサディアスは超兵器メドゥーサを使って巨大な防護壁を破壊、進行していこうとしていたのが作中で描かれています。
ストーカーとは?
緑色の目をしていてかぎ爪を持っている全身サイボーグの兵器がストーカー。今作ではシュライクという名前で登場しています。ストーカーは、元々人間でした。過去の戦いの中で死んだ人間を機械に繋いでサイボーグ兵器として復活させる技術が『モータルエンジン』の世界にはあり、シュライクもその中で作られたものの1人だったのです。
ちなみに移動都市ロンドンには原作だとストーカーを作る技術力を持っています。亡くなった人間はロンドンの工学ギルドの博士たちによってストーカーに改造されていたのです。
シュライクとヘスターの関係
ヘスターとシュライクが出会ったのは遠い昔の話。ちょうどヘスターがサディアスに刃物で顔を切られ、命からがら逃げた時にさかのぼります。なんとか逃げ切れたヘスターは、気づいた時には海岸のような場所にいました。そこでシュライクと出会い、共に過ごしたのです。
ただ、ヘスターにはサディアスを暗殺したいという考えがあったため、シュライクから離れます。それからロンドンに拾われた?シュライクはサディアスの命令に従うようなプログラムがされたため、ヘスターの命を狙うようになります。
しかし、トムとヘスターが出来ていると知ったシュライクは絶望し、もはや追うのをやめました。ちなみに原作ではヘスターもシュライクのようなサイボーグになりたいと考え、亡き者にされそうになっています。
ただそれは阻止されていました。
映画『モータルエンジン』感想
感想1.思ったよりも原作が改変されてた
『モータルエンジン』を見て真っ先に思ったのは「原作とめっちゃ違うな」という点でした。違う部分がかなり多いので言い切れないですが、まず原作ではロンドン市長マグナス・クロームが一番の悪役で、サディアス・ヴァレンタインはその腹心です。
それが映画だとマグナス・クロームはサディアス・ヴァレンタインによってやられています。逆に映画で悪役だったサディアス・ヴァレンタインですが、原作では娘のキャサリンのために尽くそうと悪い事をたくさんしていましたが、最後は改心していい人になる様子が描かれています。
ほか、ロンドンが始めに食べた小さな採掘都市ソルツヘイクンは原作だと「ソルトフック」という名前ですし、その後奴隷として売られそうになる都市の名前もスカトルバッグではなくスピードウェルでした。
奴隷市場の名前もラストウォーターという名前でしたが、原作でのラストウォーターは湿原として登場するので違います。
このように、原作と映画ではかなり改変された部分があるので、すごい変えているなと感じました。ちなみに変わっていたのは名前だけではありません。誰が死んで生き残るのか、各都市で何が起こるのかも別ものです。
気になる方は、原作を読んでおいた方がいいかもしれません。
感想2.全体的にあっさりしている?
『モータルエンジン』の面白いところは、各キャラクターや都市のバックグラウンドが説明されているところですが、映画版のほうは結構あっさりしている感じでした。登場するサイボーグのシュライクはヘスターと子供の頃に一緒だったため仲が良い設定ですが、映画だと結構あっさりしていて”ストーカー”っぽくなかったり、キャサリンが父親の真実に近づいていく過程もだいぶ端折っていたり。
やはり映画の尺の都合上そこらへんを表現するのは難しかったのかもしれません。映画が2時間なのに対して、小説はのんびり読むと1日にかかるレベルですからね。
感想3.背景の説明が少ない!
映画の世界だとどうしてこうなったのか、という背景の説明が薄い感じがしました。数千年前に何が起こったのか、都市はなぜ移動するようになったのか、反移動都市との意見対立とは何か、など映画だけでは把握しきれなそうです。
ちなみに小説ではそういったところも詳しく書いています。