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細田守監督の『バケモノの子』以来の最新作品となる映画『未来のミライ』が公開されたことで話題を集めています。
そして今回も足早に見てきたわけですが、結構自分で考えてくださいといった感じの内容になっているため何も考えずに見ているとよくわからない印象でした。
そこで今回は映画『未来のミライ』について内容の軽い考察と解説をお届けしたいと思います。
目次
映画『未来のミライ』解説と考察
解説:くんちゃんの家に起こる不思議な現象はなぜ起こるのか
くんちゃんが不思議な世界に行ったりミライちゃんがなぜか過去に来たりと謎の現象が起きている世界でしたが、これの元になっているのは家の庭に生えている樫の木が原因でした。
くんちゃん宅の樫の木は図書館で本を探すときのようにインデックスが出来ており、家系の現在過去未来全ての出来事がカードのような形になって収められているのです。
インデックスの中は球体状になっていてそこには系統樹が張り巡らせ、一本の枝から更に枝分かれするような形で記録が残されているのだとか。
そこから行きたい場所を見つけるのは困難ですが、くんちゃんはなぜかその不思議な空間に迷い込んでしまったことで過去の家系を旅する冒険をしてしまったというのがこの作品のお話でした。
考察:樫の木の索引の第一発見者はミライちゃん説
未来からくんちゃんのいる場所に来たミライちゃんは将来のお話をしていたり索引の使い方をくんちゃんに教えていたり何かと知っている素振りを見せていました。
そんなミライちゃんは実は索引を初めて発見した子なのではないかと思います。というのも過去に行っても家系の人の中には索引のことを知っているような人は誰もいませんでしたし、唯一知ってそうだったのは未来のくんちゃんくらい。
母親も当然知らないわけでやはり現状知っているのはミライちゃんとくんちゃんくらいです。これなら第一発見者がミライちゃんだったことも正解です。
ただこの先の家系に樫の木から過去現在未来に行けるなんてことが知れたらタイムパラドックスが起き放題になりそうなのでくんちゃんとミライちゃんだけしか知らないでおいたほうが良さそうですね。
考察:同時に二人は存在できないという謎と矛盾
未来のミライちゃんが来たときにはひな壇のお片付けに奮闘していたわけですが、その時赤ん坊のミライちゃんはいなくなっていました。ミライちゃんいわく「同じ時間に二人で存在出来ない」とか言っていたことを覚えています。
この設定は終盤でくんちゃんが赤ん坊のミライちゃんを妹と認めた時に大きくなったミライちゃんがやってきた場面でも守られていましたが、くんちゃんに関しては矛盾があったんです。
その矛盾というのはくんちゃんが大きくなったくんちゃんと出会った場面。本来なら二人は同時に存在出来ない設定があるわけですからくんちゃんが大きくなったくんちゃんと出会うというのもおかしな矛盾です。
これに関して考えたのは「未来から過去へ行く場合は二人は存在できない」、「過去から未来なら二人は存在できる」というパターンです。このルールなら一応矛盾を避けられるので無理やりですがこういうことにしておきましょう。
解説:くんちゃんの家で飼われるペットが犬な理由
くんちゃん宅で飼われているペットは犬のゆっこだったことはわかると思います。そしてゆっこはくんちゃんと元気に遊ぶ姿がよく見られましたが、お母さんが好きな動物は猫でした。
母が猫好きであることはくんちゃんが不思議世界に迷いこんだ際に出会った少女(小さい頃の母)がお母さんかお婆ちゃんかの靴に猫が飼いたい旨の手紙を何度も入れて根負けさせようと頑張っていたことからも明らかです。
それならばくんちゃんの家で買われるのは本来犬ではなく猫が飼われるはずでは?と思うのになぜか飼われているのは犬のゆっこです。
この答えが明らかになるのは終盤の話。未来のミライちゃんとくんちゃんが過去を巡っている最中に血を流した小さな鳥の雛を抱える少女(母)がいました。この時の鳥がやられたのは猫の攻撃によるものであり、母は猫に鳥を攻撃されたのを見て猫が嫌いになってしまったのです。
ちなみに鳥の巣はくんちゃんが住んでいる家にもまだ残っている描写もありました。
動物を飼わないという選択肢もありそうですが、お母さんは少女のときから動物と打ち解けやすい性格をしていた話もあったりするので飼わない選択肢はなかったのかもしれません。
考察:映画『未来のミライ』は結局どういう話なの?
映画『未来のミライ』はただ見ているだけでは勝手に始まってくんちゃんがぐずって気づいたら映画が終わってたレベルで何が言いたかったのかよくわからなかったという方もいるんじゃないでしょうか。
実際私自身も初めて見たときは「ミライちゃんの出番少なくない?」とかその程度の感想しか沸かず今まで見てきた細田守監督作品の中でも何が伝えたいのかよくわかりませんでした。
ただ改めて考えると案外テーマ性を感じる部分があり、その一つはくんちゃんにミライちゃんを本当のお姉ちゃんだと認めさせるというものがあります。
元々くんちゃんはお母さんとお父さんから愛情を込めて育てられており、充実した毎日を送っていました。しかしそんなくんちゃんに妹のミライちゃんが生まれたから状況が一変。両親はミライちゃんに夢中でくんちゃんのわがままは聞いてくれず、くんちゃんもミライちゃんに愛情を奪われたことで嫌っています。
その嫌い具合は半端なく赤ん坊のミライちゃんを叩きつけようとしたり現実で考えても中々タブーな行為をしていたから驚きでしょう。そしてくんちゃんはミライちゃんのことを「好きくない」と何度も何度も言い、未来のミライちゃんが自宅にやって来てもくんちゃんはミライちゃんのことを「好きくない」と言い「妹でもない」と言います。
しかし最後には謎の世界で赤ん坊のミライちゃんを守り、「ミライちゃんはくんちゃんの妹だ!」といった感じのセリフを言って妹であることを認めました。これは散々ミライちゃんのことを好きじゃないし妹でもないと言っていたのに最後にミライちゃんを妹と認めて守ったわけですから「くんちゃんにミライちゃんを本当のお姉ちゃんだと認めさせる話」というのがテーマとして成立しています。
解説:映画『未来のミライ』はくんちゃんの成長物語がテーマ
わがままなくんちゃんにミライちゃんを妹と認めさせるのがテーマの1つでした。またこの映画にはくんちゃんの成長物語という側面も各所で見られたと思います。その場面は不思議空間に何度も行ったくんちゃんが色々な物を目で見て、それから現実世界で経験を踏まえて新しい自我が芽生えるという描写が何度もあることからもわかります。
一番わかりやすいのは自転車に乗れるようになったこと。くんちゃんは1人で自転車に乗れなかった上に乗るのを拒否していましたが、謎世界で出会った青年に「遠くを見る」というアドバイスを貰ったおかげでやる気になり見事自転車に乗れるようになりました。
このようにくんちゃんは色々なものを見ることで成長していったわけですから成長物語と言えます。とは言っても見ていて生々しい感じに出来ない子描写があったと思いますが。
考察:くんちゃんが赤ん坊のミライちゃんを助けた理由
謎の世界で両親の名前を忘れてしまったくんちゃんは遺失物係の場所で唯一名前を覚えていたミライちゃんの名前を出していました。そんなくんちゃんは赤ん坊のミライちゃんが歩いて電車に入ろうとするのを見て追いかけて助けています。
この理由は親元のわからない者はどこかよくわからない世界に電車で送られるという設定があったからですが、もう一つの理由はくんちゃんが両親からいわれたセリフにあります。
映画の冒頭のちょっとしたセリフなので忘れがちだと思いますが、両親がミライちゃんをくんちゃんに初めて紹介した時にこういったセリフを言っていました。
お母さん「何かあったら、守ってあげてね」
お母さんのこの言葉を思い出したくんちゃんは今まさに赤ん坊のミライちゃんが電車でどこかに連れていかれてしまうことに対して守ってあげなきゃという意識が働きいて助け出したわけですね。
考察:ミライちゃんが過去のくんちゃんの元に来た理由は?
制服姿でくんちゃんの前に仁王立ちしながら現れた未来のミライちゃんは口と鼻にくじらのクッキーを挟んでやってきて、くんちゃんに対してひな壇を片付けてほしいと頼んでいました。そんなミライちゃんが未来からやってきた理由はミライちゃんも言っていましたが、「好きな人と将来結婚出来ない」とか「1日遅れたら1年、2日遅れたら2年婚期が遅れる」というものです。
結論から言うとミライちゃんが来た理由は「婚期を遅らせたくなかった」というのが正解だと思います。ただひな壇の片付けが遅れたらなんで婚期が遅れてしまうのか?という疑問が湧くのも見た人の率直な意見でしょう。
これにはひな壇人形にまつわる迷信があります。その迷信は分けると複数ありますが、今回の意味で言うと「早く雛人形を飾れば早く嫁に行ける」といった意味です。これは早く雛人形を飾れば嫁入りも早く若いうちに結婚出来るという迷信ですが、逆に考えると遅く飾ったら嫁入りも遅れると捉えられます。
また片付けも早く済ませれば嫁入りも早く済ませられるという意味に捉えられ、遅ければ嫁入りも遅くなるのです。この片付けの遅れによる嫁入りの遅れは1日で1年、2日で2年と劇中でも言われていた通りの遅れが迷信として信じられているため、今回のお話をキレイに当てはまります。
このことから細田守監督はこの雛人形にまつわる実際に存在する迷信を取り入れていたわけですね。
考察:ミライちゃんの痣に込められた意味とは?
生まれたときからついていたと言われるミライちゃんの痣はくんちゃんが赤ちゃんミライちゃんの手のひらを初めて覗き込んだ時には既についていたものです。お母さん含む大人たちはその痣について「将来ミライちゃんが気にしないかな・・・」と心配する様子を見せていましたが、果たしてこの痣にはどんな意味が込められていたのでしょうか。
単純にこの意味を考えた場合第一に考えられるのはくんちゃんが未来のミライちゃんを見分けられるためにつけられた設定というのが考えられます。実際のところくんちゃんは赤ちゃんの時のミライちゃんの痣の事を知っており、その後に制服姿でやってきた未来のミライちゃんを見て「もしかして未来のミライちゃん?」と気づいていました。
またラスト終盤でも謎の世界で迷子になったくんちゃんは痣のついた赤ちゃん、つまりミライちゃんを見つけて守ろうとしており、その後に痣を見て未来のミライちゃんが来てくれたことを判別していました。
つまりミライちゃんの痣はくんちゃんがミライちゃんであることを判別するためにつけられたものだったのです。
解説:ミライちゃんの痣は医学的には「いちご状血管腫」の可能性?
「いちご状血管腫」、またの名前を「乳児血管腫」と呼ばれるものは生まれたばかりの赤ちゃんに数人に1人の割合で見られる体の表面の赤い痣のことを言います。この痣は毛細血管が増殖した良性の腫瘍なわけですが、赤ちゃんそれぞれによって酷さはかなり変わるものです。
劇中のミライちゃんにもこのいちご状血管腫が生まれた時からあり、それなりに酷かったもので成長しても残っていたというのが医学的な意味だと考えられます。ちなみにこのいちご状血管腫はこの記事を書いている私の兄弟の赤ちゃんにもありました。頭に1センチくらいの大きさで真っ赤な斑点がくっきりとみられて手術か治療はしているみたいです。
ネットで画像検索をすると参考写真が見られますし、実際の写真もミライちゃんみたいな赤い痣のお子さんがいますよ。